トモニデザイン

息子たちへ 君たちはまだ小さいけれど、ともに暮らしをデザインしていこう

心理テクニックを用いて、知らない間に人を動かす事は、ホントに悪い事なのか?

心理テクニックを用いて、知らない間に人を動かす事は、ホントに悪い事なのか?

息子たちへ

 

選択についての話を何度かしたんだけど、人は不思議なもので、必ずしも正しい

選択をする訳ではないんだ

ここで言う「正しい」というのは、いわゆる合理的という意味での「正しい」であって、

感情的な「正しい」って事ではない

合理的な「正しい」と感情的な「正しい」が多くの場合イコールではない事から

それを用いて、人をその人の知らないうちに動かしてしまう方法も存在するんだ

 一般的に心理テクニックって言われている

営業でよく使われる心理テクニック

心理テクニックが使われる場面は色々あるかと思うが、その中でも、

知らないうちに人が動かされてしまうという意味では、営業という

場面が代表になると思う

営業で使われている心理テクニックは色々ある

(実は、いくつかはトウちゃんも試した事がある)

〇フット・イン・ザ・ドア

これは、「足さえドアの中に入れてもらえたら、後はどうにでもなる」という

テクニックで、まず、相手が必ずOKを出すレベルの小さなお願いごとから

始め、だんだん要求を大きくしていくもの

町でたまに聞く「アンケートにお願いできませんか?」というキャッチ

なんかは、このテクニックを使っているんだ

これは、一度OKしたのだから、次もOKしなきゃという人の一貫性を

利用したものなんだ

〇ドア・イン・ザ・フェイス

さっきのフット・イン・ザ・ドアの反対で、まず、かなり大きい要求をした

後で、本来の要求をだすというテクニック

よく、映画の中のやりとりで、

お客さん 「これ、いくらだ?」

 店のヒト 「5千円」

 お客さん 「もっと安くならないか?」

 店のヒト 「お客さん、よく来てくれるから、3千円でいいよ」

ってな事があるが、それはドア・イン・ザ・フェイスを使っているんだ

先に「5千円」って言うことで、お客さんの基準が5千円におかれて

しまい、3千円が安く感じてしまうんだ

これは、アンカリングと呼ばれるもので、金額だけじゃなく、例えば、

 店のヒト「携帯の下4桁は、何千何百?」

 お客さん「5千5百・・・」

というだけでも、3千円が安く感じてしまうぐらい強力らしい

ついでに、「月々のお支払額は、コーヒー一杯分程度です!」とか

言うテレビショッピングも、このテクニックを使っている

 

テレビショッピングの話がでたんだけど、テレビショッピングは、

そんな心理テクニックの宝庫だ

・「芸能人の〇〇さんも愛用されています!」

 有名人(よく見るヒト)が、使っていると、なぜか効果があるように

 感じてしまう

 ママ友が「これいいわ」と言うと、そのグループで広まってしまうのも

 この影響

・「さっきから、注文のお電話が殺到です!」

 みんな買っていると聞くと、自分も買わなければってなってしまう

・「もう、のこりわずかです!」

 人は、「手に入らなくなるかも・・・」ってのに、かなり弱い

 

他にも人の選択を誘導する心理テクニックはたくさんあって、その

テクニックに逆らうのは、悟りを開きでもしない限り、かなり困難で

面倒なものなんだ

 

知らないうちに、相手の思い通りに選択してしまっている

自分は、正しい選択をしているつもりなのに、思う壺になっているって

なんだかイヤな感じがするよね

トウちゃんの知り合いがマンションに住んでるんだけど、深夜の

テレビショッピングを見て、思わず高圧洗浄機を買ってしまった

人がいる

そのテレビショッピングでは、「汚れた家の塀も、こんなにキレイに」

なんてやってたらしいけど、その人、マンション住まい

買った後に「キレイにする塀がないやん・・・」って嘆いてた

店に置いてあるだけなら、彼はそんなもの絶対に買わないはずなのに

 

でも、心理テクニックで、人を動かす事は、ホントに悪いこと?

そんな、心理テクニックを使って、人の選択を誘導することって、

悪いことなんだろうか?

 

例えば、次のようなCMはどうだろう?

・有名人が出てきて

・「ネパールの地震で、被災者となった〇〇君は、治療を受けられずにいます」

・「あなたが、1日コーヒー1杯ぶんのお金を寄付してくれれば、

  〇〇君は、治療を受けることができます」

・「すでに、あなたが住んでいる地域の〇〇%の方が、寄付されています」

 

ここには、4つの心理テクニックがでてくる

・有名人が語る事により、その話が正しい事だと思わせ

・寄付金は当然、その地域で困っている子供全員に行き渡るのに、

 個人の名前をだす事により、親密感を醸造し、

・合計で支払う金額を分割する事で、その金額を「たいしたものじゃない」と

 錯覚させ

・みんなが寄付しているのに、あなたはマダ寄付していないと

 プレッシャーをかける

 

寄付する人に、本当に合理的に判断させるためには、少なくとも

・治療を受けられない被災者は、10万人います

 あなたの寄付金は、その10万人が治療を受ける費用の〇%になります

・寄付金として求めているのは、15,000円です

 あなたは、そのお金を寄付しない場合、子供に自転車を買ってあげる

 事もできますし、子供がしたがってる野球を習わせる事もできます

・あなたの地域の人が寄付しているかどうかは知りません

ぐらいなCMになると思う

 ※ちなみに、2番目に上げた渡す[払う]金額で、買えるものを思い浮かべる

  ってのは、衝動買いの防止に効果がある

  店で、「これ欲しい!!」ってものがあった際は、一度ためしてみては

 

マンション暮らしの彼に高圧洗浄機を買わせたテレビショッピングと

被災者への寄付をと呼びかけるCMはともに、人の選択を誘導する

テクニックを利用している

 

どうだろう?同じテクニックを利用しているこの2つの例をみて

君は、どちらも「誘導されてしまった」ってイヤな感じがするだろうか?

 

トウちゃんは、なぜかテレビショッピングにはイヤな感じがするけど、

被災者への寄付をつのるCMは、許せる気がする

 

それは、寄付をつのるCMには、トウちゃんの思う正義があり、

テレビショッピングにはそれがないからだと思う

 

人が、心理テクニックで選択を誘導されてしまうような不合理な

存在であるならば、

  1. その目的が正義のためであり、
  2. それ以外の選択を行う事が容易であり、その選択は尊重され、
  3. 誘導された選択による影響(不利益)が、十分に許容できる範囲である

場合は、心理テクニックをつかった誘導は許されるとトウちゃんは思う

 

例えば、フランスなどで行っている臓器提供の意思表示をオプト・アウト方式に

する事や、オーパワー社が行っている電気使用量を周囲と比較できるサービス、

それに、ユニセフのCMなどは、そんな心理テクニックを使っても許される

ものだと思う

 

ただし、「その目的が正義である」というものが大前提であり、

トウちゃんは、正義とは、ある位置から見ると正義だが、違った位置から

見るとそれは正義じゃなくなるものだと思っている

正義とはそれを見る人一人ひとりの価値観や経験によって作られるもので、

絶対正義というものは、存在しないし、してはいけないものだと思う

正義については、君がもう少し大きくなったら、話し合おう

 

まとめ

人というのは、心理テクニックで選択を誘導されてしまう不合理な存在だ

それが分かっていながら、心理的誘導を行われるのは、いい気がするもんじゃない

 

でも、トウちゃんは心理テクニックをつかって誘導する目的が正義のための

ものならば、許されてもいい場合があると思う

 

君は、どう思うだろう?